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最初のノーマルの写真から、ずいぶんと変わったなぁ。完成予想イラストにだいぶ近づいたと思わない?

 アルファチャレンジで勝ったくらいでプロが喜ぶわけ!? なんて意見もあるかもしれないが、そうでもないんだ。レースって、クルマの性能が占める要素がすごく大きい。特にアルファチャレンジの出場マシンは改造レベルが高く、クルマの差が速さの差となっているのが現状だ。それに対してこちらは下ろしたての新型GTで、チューニング・パーツもデータもない状態から仕上げていくわけだから、苦戦を予想した。と同時に、ノウハウの蓄積も期待していたんだ。

 初めてM/T車で出場したが、ヒール&トーやブレーキの素早い踏み換えができなくて、満足できる運転は難しかった。絶対にミスがないように走っただけ。元プロドライバーの経験が活きたのは「運転」ではなく、「人」を集結できたことだ。

 開発目標は、単に性能を上げて一発の速さを狙うのではなく、コンスタントに速く走れて壊れないクルマを作ること。これがシリーズの結果につながると信じていた。それだけに第二戦でのマシン・トラブルはショックだった。

 でも、これにより対策が講じられ、同時に並木メカ以下パーツ開発陣を含めてチームのみんなの気持ちが引き締まったのは幸いだった。「俺たちの腕の見せ所だ」とやる気も高まったようだ。

 サーキットに応援に来てくれる人が大勢いて、このページでも注目されているから、力を抜くことはできない。それがよい意味でのプレッシャーとなり、スタッフの集中力も高まった。つまり、勝利はティーポ読者と応援団と我々チームスタッフ全員の勝利だ。と僕は考えている。みんなありがとう!

 来年はこの連載のスタート時に宣言していた「究極のストリート・アルファ」の開発もレポートし、ノウハウをアルファ乗りにもっと提供するつもりだ。

 

太田哲也自身が自分で乗りたいクルマ

 最近の傾向として、マーケティング主導で作られているクルマが多い。どんな生活で、どんな家族構成で、年収はいくら。つまりユーザーのライフスタイルや価値観を予想し、それにぴったり合ったクルマをメーカーはリリースしようとする。そうしたクルマは、確かに自分に合っているだろう。でも、『お前の身の丈に合った車は、これだよ』と押し付けられているような気がしてこないか?

 人から押し付けられたクルマに乗るほど俺の人生はそんなにショボクない!

 そう感じている人は少なくないはずだ。

 僕のクルマ選びの理想は、単に便利な道具を買うのではなく、夢を買うことにある。単なる移動の道具ではなく、人生のパートナー。どんなクルマに乗っているか、あるいは乗りたいと思っているかは、自分がどんな人生を送ろうとしているかの表現になる。つまり魂の解放だ。作り手の熱い想いやこだわりが込められたクルマに乗りたいと思う。

 とは言っても、クルマがマスを狙った大量生産品である以上、妥協の産物であり、本当に自分にどんぴしゃなクルマを得ることは難しい。

 例えばアルファ。フェラーリに通じる「ドライビング快楽主義」が魅力だが、たまに乗り手の意思についていけないところがある。そういうところを補ってあげて、魅力的部分をさらに磨きこんでいければ、僕の理想系に限りなく近づくと踏んだ。

 そこで僕は、自分自身が乗りたくなるクルマを作ることにした。それがTEZZOだ。

 では、TEZZOをどういう人に乗ってもらいたいか?

 それはもう、俺自身。自分で金を払っても乗りたいと思えるようなクルマ。それと僕の考え方に共感してくれる人や価値観を共有してくれる人たちにも乗ってもらいたい。

 では、実際にはTEZZOはどんなイメージのクルマを作るのか?

 もしかしたら、レースカー的なクルマを想像する人もいるかもしれないけれど、それは断固違う。意外に思う人もいるかもしれないけれど、まずは快適であること。その空間にずっと包まれていたいと思えなくては「ドライビング快楽主義」の意味がないからね。それは絶対条件。だけれども、限界領域でドライバーの意思を裏切らない操縦安定性も大切だ。そして一発の速さよりも、耐久性が高いことの方が重要だと僕は考えている。

 たとえば、足回りを改善して限界領域でのアンダーステア対策を講じたい。足を固めればそれは可能だが、そうすると足ががちがちになってしまう。レースカーだったらそれでもOKだが、ストリートカーにそんな足では通用しないだろう。

 その他にもブレーキ加熱によるブレーキ・フェード対策や、排気系を改良しスカッと抜けるようなエンジンフィーリングも手にしたい。相反する要素が高度なバランスで保たれているのがTEZZOの理想だ。もちろんメーカーが提案した美点を失っては意味がない。単なる走り重視のクルマではなく、すべての面で究極の走りのバランスをめざしたい。

 チューニングの目指す方向性は?

 TEZZOの考え方は、最少のチューニングで最大の効果を上げることにある。実はレースの手法もそうなのだ。もしかしたらレースのやり方は、スペシャルな部品をどんどん投入して、すごいお金をかけてがんがんやるというイメージを持っている人がいるかもしれない。でも実際は違うんだ。

 レースの世界では効率性を大事にする。もし、その改造をやっても効果がそんなに上がらないなら、やらない方がいい。なぜなら、余計なパーツをつけると、コストも耐久性も重量面でも、不具合の発生源となるからだ。

 つまり、どういうことをしたら効果があるのか、それを見極める目が大切なのだ。

 さらに、その道のスペシャリストを探し出し、いい仕事をしてもらうのもレースの手法だ。それにもし自分がお金を払う立場なら、本当に効果のあるものだけをつけたいと思うはず。

 で、いよいよ来月から、TEZZOのコンプリートカーの製作状況を紹介したい。ま、口でエラソーなことを言うのは簡単だけど、実際に作ってみると大変なんだなあ〜これが。

 

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